人知らずして慍らず、亦君子ならずや

幽谷の芝蘭、常の時に芳し(ゆうこくのしらん、つねのときにかんばし)…孔子家語の言葉を引いて、わが恩師が教えられた言葉だ。

深山幽谷に咲く芝蘭は誰に知られる事もないが、芳しい香りを放っている。人も誰に知られる事がなくても、為すべき事をなし、自分の成長に向かって怠りなく努めなければならないということだろう。

しかし、誰に知られなくても努力を惜しまないというのは、凡人にはかなり難しい事だ。我々はどうしても自分を正当に評価してもらいたいと願う。職場でも、学校でも、あるいは夫婦の間でも、自分が人のためであれ、何であれ、努力して成した事は認めてもらいたいと思うのが普通だ。もし、自分の努力が認められなければ、腐ってやる気を失ったり、時には認めてくれない人を恨んだりすることすらある。

人知られずとも淡々とその努力を続けるという事は、大変に難しい事だ。しかし、こうありたいと心がける事は出来る。君子と言われるような方の言行だ。そう簡単にまねる事はできまい。でも、自分もそうありたいと願うなら、少しずつではあっても近づけるにちがいない。

論語学而第一に「学びて時に之を習う、亦説ばしからずや。朋有り遠方より来る、亦楽しからずや。人知らずして慍らず、亦君子ならずや。」(まなびてときにこれをならう、またよろこばしからずや。ともあり、えんぽうよりきたる、またたのしからずや。ひとしらずしていきどおらず、またくんしならずや。)とある。

諸国を訪ね歩いて自分が理想とする道徳の世の実現を進言するも用いられなかった孔子様の言葉だけに、重い。

<クリックにご協力を!>

にほんブログ村 哲学・思想ブログ 名言・格言へ
にほんブログ村

カテゴリー: 故事名言 | コメントする

浩然の気

時に仕事に終われ眠れぬ夜が続くと体調が悪くなる。めまいがしたり、吐き気がしたり、なんとなく気分が滅入ってしまうのもそんな時だ。

国語辞典で「気」を引くと空気、心、心の働き、自然の中で起こる様々なようす、生まれつきの性質などとある。どれも捕らえようがなくて、それでいて確実にあるもの
ばかりだ。気が重い。気が乗らない。気が短い。気を配る。気が付く。気が長…と、「気」がつく言葉は幾らでも出てくるが、なんとなく自分の心をどうするかで変わるもののような気もする。

コップの中に水が半分入っているのを「半分もある」と取るか、「半分しかない」ととるかで気持ちはずいぶん変わって来る。「半分もある」は、「よかった、ありがたい」という感謝、満足の状態。これはプラス思考だ。これに対し、「半分しかない」と受けとるのは「たったこれだけ」という、絶望、不満な状態で、マイナス思考だ。

人は得てして物事をマイナス思考で考えがちだ。「半分しかない」と受けとる否定的な物の考え方は肉体にまで影響を及ぼす。私達は、「〜だから出来ない」と自分自身に言い訳していることが多い。出来ない理由は簡単に出てくる。自分を庇うことは皆得意だからだ。そして自分には乗り越えられないという壁を作ってしまう。

蚤のことを知っているだろうか。蚤はあのちっちゃな体で大変なジャンプカを持っているらしい。ところが、瓶の中に入れて蓋をすると、はじめは瓶の上にぶつかり、底に叩き
つけられることを繰り返すが、そのうちにぶつからないでジャンプするようになる。これを繰り返していると、瓶の蓋を取ってやっても前のようにジャンプはしなくなるそうだ。そして、二度と瓶の外に飛び出す事はない。蚤だって、痛い思いはしたくないのだろう。

考えてみれば、私達もこの蚤と似たような事をやってはいないだろうか。何度かの失敗で「もう駄目だ。私には無理だ。出来るはずがない」と、自分自身に言い聞かせて壁を作ってしまう。人は限りない可能性を持っているはずなのに…。

私達は、この与えられた無限の可能性を自ら切り開いていくために、常に物事をプラス思考でとらえる訓練が必要なのかも知れない。「出来ない」ではなく、「できる」という確信をもって体当たりすることが必要なのだろう。昔から、「為せば成る、為さねば成らぬ何事も、成らぬは人の為さぬなりけり」と江戸時代後期、米沢藩主上杉鷹山の言葉にある。

思うに、この自分を信じるカの源泉となるものが「気」なのだと思う。
この気を常に充足させて毎日を送ることができれば、元気で前向きな人生を歩む事ができるのではないだろうか。大自然の中に充満するあらゆる物を生み育てる「宇宙の気」を自分の中に取り入れることができれば、気分もすっきり爽快になるのだろうが…。

そういえば、孟子様のお言葉に「我れ四十にして心動かず、善く浩然の気を養う。」とあるが、「浩然の気」もこの宇宙の気のことなのだろうか…。

<クリックにご協力を!>

にほんブログ村 哲学・思想ブログ 名言・格言へ
にほんブログ村

カテゴリー: 故事名言 | コメントする